蝶/
岡村明子
近い、というわけでもなかった
とはいえ
コーヒーカップのふちに佇み
水面へ口のストローを伸ばしているこの蝶の姿には
愛着を持たざるを得なかった
コーヒーを飲もうとする蝶なんているだろうか
蝶おかしい
いやこの場合は
超おかしい
だ
誰かは知らないが
疲れた僕の心をなぐさめに来てくれたんだろう
ありがとう、
と心の中でつぶやくと
蝶はもういないのだった
明るい秋の午後
コーヒーカップに燐紛が光って
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