土星さんの帽子/角田寿星
 
おいで よい逢瀬を

売られてクスリ漬けにされて
骨まで灼かれたあたしの
かえる場所はもとよりどこにもなくて
それでも毎年のこのこやって来るのは
ただただ土星さんに逢いたいからで
そんなことはとても言えなくて
ぽろぽろ涙がとまらないで
土星さんの帽子あたしをぎゅっと抱きしめて
土星さんやさしくてあたしますます泣けて
土星さんのほんとの顔やっぱりわからなくて
さよなら いってきます
やっとの思いで声しぼり出した
あたしは
もう忘れなくちゃいけないのでした

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