心地の良い、二日酔いだ/緋乃村燿介
そのタバコ、やめてくれないか?
思い出しちまうんだ
あいつが、死ぬ前にはじめてやった悪い事。
トモダチだったのに
何も出来なかったんだよ
その煙が、俺の心を燻して燻製にしていくから
もう……やめてくれないか?
消えていく紫煙に
遠い記憶の映像が見えて
少しだけ、泣きそうになった
ごめんな
お前、何も知らないのに
ごめんな
ごめん
いいよ、禁煙する予定だったし
優しい嘘が
すごく優しすぎて
こいつとトモダチってことが、凄く嬉しかったんだ
ほんとに、ありがとう。
心で呟いて、酒を飲み交わした
朝まで飲んで
今日は、心地の良い二日酔いだ。
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