紫陽花/shu
月明かりに仄かに紫陽花の花びらが浮かび上がる。
ゆめこはそっと鼻を近づけてくんくん犬みたいに嗅ぐ。
「あじさいは毒があるんだぜ」
私がそう言うと花をひとつ捥いで、いたずらに口をあけてみせる。
「痙攣、過呼吸、麻痺が起こって死ぬんだ。意外と知られてないけどね」
「ふーん」
紫陽花をバックに月明かりでヌードを撮ろうと言ったのはほんの気まぐれ。
それを真に受けて、ゆめこは下着も着けずに白いワンピースををはおり
渋る私の手をとって、二人は近くのお寺の境内に侵入したのだ。
夜の寺は海の底のような青く澄み切った空気に満ち、漆喰の本堂や苔むした地面、
深
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