君の優しい声が鼓膜に響く/きりえしふみ
君の優しい声が鼓膜に響く
諦めよう、と 睫と睫に囲まれた風景 遮断する心づもりでいたんだ 僕は
パシャッパシャッ……乾いたシャッター音響かせて
瞳の向こう側 身を捩る動体
“あちら”は作りモノ、だと
切断しようとしていたんだ
女を男 から 引き離すように
昼から夜 を 取り上げるよう 追い立てるように
空から月 を
ビルから壁 を
指から爪 声から喉 を
引き離す ように
忘れよう、と 思っていた
小さな身内に 己 を 押し込めて 封を する
そのような様 は
鳴り出さずにはいられない 程の
音の記録を閉じ込めた
それでも歌わぬオルゴール
それでも語らぬ
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