家電物語/たもつ
ち際の蛍光灯に海ほたるが付着して、やがてかつての団欒のような明りがぼんやり灯るだろう。
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男は朝起きて電気シェーバーでひげを剃ろうとしたが、顔が無いことに気がついたので、仕方なく歯を磨こうとしたがやはり顔が無かったので、泣こうとしても泣くこともできなかったので、大好きな天気予報を見ることも聞くこともできなかたったので、念のため出掛けに傘を一本持って行くことにした。
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とある電化製品の取扱説明書は先鋭な思想と美しい文体とで、世界的に権威の高い文学賞を総なめにしたが、製品の方は必要なネジやバネが無いなど欠陥だらけで、さっぱり売れなかった。
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計算が苦手な計算機は家族
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