「カブトムシ」/ベンジャミン
 
カブトムシの眼はきれいだ
黒い真珠のようだ

あるいは透明な膜でつつんだ
何かの宝石のようだ

(動かなくなっても)

まるでずっと何処かを
見つめているみたいだ

動かなくなる少し前
必ずと言っていいほどカブトムシは

(カブトムシに限ったことではないけれど)

六本の脚をきれいに組んで仰向けになる
最後の力を使いきって

(仰向けになって動かなくなっても)

まるでずっと遠くの何処かを
見つめているみたいだ

それが来年の夏だと思うのは
ひどく勝手な妄想なので

僕は僕には見えない天国みたいな世界が
真珠のような 宝石のような
あの黒い瞳に見えていればと

(本当は瞳というのもちがうのだろうが)

仰向けになって動かなくなった
カブトムシの眼に映っていればと願う

すべからく僕もまた

いつかそういうときが
自分に来るということしか知らないのに
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