あおむし/銀猫
草いきれと湿った地面の匂いがする
(夏だ)
こっそり張られた蜘蛛の巣を
黙って許すことにした
いのち、を
思ったわけではないのだが
今日はこの国や
内包する宇宙にも
とりわけ関心がなく
眠りを貪っているうち
羽根を失い
アオムシになったらしい
きっぱり残った触角で
棘をよけながら
からだを伸縮し
この世を這っていくのが
(ゆるり)
(のらりくらり)
約束事だったように
ごくふつうのことだ
アオムシは思わない
しあわせについて
あるいは明日について
(ゆるり)
(へたり)
不意を突き、
鳥に呑み込まれても
きっとそれも約束のうち
アオムシ、短く、夏。
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