「名」馬列伝(4) ツキノイチバン/角田寿星
4角に差しかかるところだった。圧倒的な1番人気だった彼は、外から3番手まで捲り、先頭を窺うところまで上がってきた。彼がどのように勝ちを収めるのか、観客の興味はそこだけに集約されていた。
次の瞬間、彼の躯がガクンと前に折れ、なおも走ろうとする彼を騎手が止める。左前肢骨折。明らかに重症だった。
3年間ずっと彼に付き添ってきた厩務員は、その場でわっと泣き崩れた。調教師は唇を噛みながら、じっとその光景を見つめていた。
42年にも渡る騎手生活に別れを告げた、川崎競馬場所属の7100勝騎手、佐々木竹見が思い出の馬を語る時、いの一番に名前の挙がる馬がいる。昭和60年代、1歳年下の東京王冠馬ロッキ
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