在処/霜天
子供の頃、記憶を辿る指
駆け抜けるための玄関
右へ曲がれば大きな草原
跳ね返されるほどの大きな
抜け道
獣道
畦道
辿る指、握っていた手
見上げていた、手
顔の向こうの月、薄い月、不安定な、月
朝の、残された温度
焼けていたのは、私だったのか
朝焼け、夕焼け、赤い空、赤い人
耳を押し付けた背中
抱かれていたのか抱いていたのか
もう届かない心音なの、か
遠ざかっていく無数の足音、なのか
目を瞑る、抱えて眠る
こわいゆめをみなくなったのはいつごろだったかな
何度も何度も何度、も何度も
それらを繰り返して
寂しさは此処には無い
震える手のひらを優しさと決めつける、そんな
寂しさは此処には無い、辿っても
追いつけない褪せた声の吹きだまりに
私たちは、置いてきたのだ
戻る 編 削 Point(0)