「エリンギ」/ベンジャミン
て眺めている
妻がいったい何を思ってエリンギを
何ともたとえようのないエリンギを
ああ君はそんなにも強く握っている
「やっぱりソテーにするわ」と
妻は一人納得したように包丁を入れた
エリンギに
その瞬間
わたしの全身をどうしょうもない衝撃が貫く
(献立だったのか! それだけだったのか!)
しばらくして
きれいに料理されたエリンギが
テーブルの上で無残な姿を見せていた
フォークがそえられている
フォークで刺して食べるのか
「ごめん 箸とってくれるかな?」
すまなそうに妻に頼む
不思議そうに箸を差し出す妻と
きれいに料理されたエリンギに
わたしは目を合わせられないでいた
お腹が満たされる以前に
わたしの心は
ソテーされたエリンギのようにしおれ
満たされることはなかった
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