「エリンギ」/ベンジャミン
ある夕方
妻が台所でエリンギを持って立っていた
しげしげとエリンギを眺めている
じっくりと観察しているようにも見える
よりによってエリンギだったので
エリンギを握っている妻の手が
わたしの想像力を刺激してしまう
(エリンギだよ エリンギなんだよ)
エリンギってただのキノコだよと
精一杯自分に言い聞かせても
詩的情緒を超越した想像がよぎる
「何笑ってるの?」と突然
妻があのエリンギを握ったまま聞いてきた
(笑ってる? ひょっとしてにやけてた?)
「わらってれないよ」と焦ってこたえた
妻はやっぱりエリンギを握って眺
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