未完の、ソネット 「隠家(あじと)」/望月 ゆき
 

わたしの、隙だらけの皮膚を突き抜けて
メタセコイアが生えている
臓器はいつしか記憶を失くし
葉脈を血液だけがめぐりつづけいる



あまりにむごい手つきで
世界が わたしを愛してやまないので
どんな角度からも見つからない場所に
自らをかくまっている



広がっていく、巨大迷路の壁越しに
幼子を呼び戻す声がきこえる
空はしばしば 葉脈を切断し、そこから
夕焼けがうまれる



ただいまを言うために、口をひらく
するとわたしがいなくなる






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