未完の、ソネット 「隠家(あじと)」/望月 ゆき
わたしの、隙だらけの皮膚を突き抜けて
メタセコイアが生えている
臓器はいつしか記憶を失くし
葉脈を血液だけがめぐりつづけいる
あまりにむごい手つきで
世界が わたしを愛してやまないので
どんな角度からも見つからない場所に
自らをかくまっている
広がっていく、巨大迷路の壁越しに
幼子を呼び戻す声がきこえる
空はしばしば 葉脈を切断し、そこから
夕焼けがうまれる
ただいまを言うために、口をひらく
するとわたしがいなくなる
戻る 編 削 Point(8)