雨なんて降らないから/小原あき
 
を見ていない
母の「ありがとう」も
親友の「ありがとう」も


あれだけ好きだったみんなを
信じられないなんて
悲しい、と
ただ、
ひたすらに


泣いていたら


涙で
持っていた自分の
「ありがとう」が
全部、溶けてしまった


ご飯を食べても
キスをしても
道を譲られても


何がありがたいのか
わからなくなってしまって


ただ、眠る前に
「ありがとう」の雨が降ってくる
夢を見られるように
祈るだけ


自分の「ありがとう」を失くして
誰にもあげられないわたしには
雨なんて降らないから












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