遺書(1)/虹村 凌
込み、大きく吐き出した。灰色の煙が固まりになって、俺の目の前で踊る。ナメクジの交尾のようにグルグルと周り、そいつはやがて上昇して、消えていく。
ふと思い立ち、俺は立ち上がった。ポケットの中の小銭を確認すると、家の鍵を掴んで外に出た。カーテンを閉め切っていたお陰で、外がどのような明るさなのか理解していなかったが、外の世界は朝とも夕方ともつかぬ、薄暗い曇天であった。ホープを排水溝に投げ捨てて、一度大きく伸びをしてから、自動販売機のある方向に向かった。
自動販売機に向かう途中で、現在は平日の朝である事を知った。どうも、スーツ姿のサラリーマンが多い。OLや学生もいる。これは、間違いなく平日
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