No Name/かのこ
ずたずたに切り刻んだり、
くしゃくしゃに丸めたり、するわけでもなく
例えば、鼻をかんだティッシュと一緒に駅のごみ箱へ
自らの名前を捨てた。
あの日から。
手を繋いでも口付けても、抱き合っても
呼んでくれないのは、呼ぶ名前がないから。
きっとその方がいい。
答は導き出したところで、いつも言い訳になった
間違いだと思うのは、その所為だろう。
否定する。拒否をする。
実体が今、此処にある。
だから、悲鳴で耳を塞いだ。
塞ぐ為にあるようなものだもの、耳なんてさ。
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