文鳥/北村 守通
文鳥は
帰ることができませんでした
あんなにうとましく思えた
ステンレェスが
今では
こんなにも
いとおしく想えるだなんて
文鳥は
飛ぶことを止めました
あこがれの空は
どこまで行っても
飽きることのない
あこがれでしかなかったのでした
文鳥は
そして
歌うことも止めました
だからといって
食事にありつけるわけでもないのですし
ならば
いっそ
無駄は省くべきなのです
いっぱいになったので
考えることを止めました
文鳥は
じっと
じぃっと
瞼を閉じて
枝に座っておりました
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