クロール/遊佐
 
だ、知らないだけで
胎内で膝を抱えたまま時を待つ赤子のように弱々しく映る

すぐ其処に在る出口を抜ければ
降り注ぐ陽射しが
駆け巡る風達が
世界中のありとあらゆる扉の鍵を授けてくれるだろう


両手を開き
ゆっくりと
不器用な手つきで
もがきながら
真ん中を目指して泳ぐがいい


いつか、水面で波を切り裂いて
誰よりも速く泳ぐ君を僕は夢見ているんだ


いつか、波を捕まえて鮮やかにクロール、

を…。



戻る   Point(9)