し/乱太郎
わたしは
待っているのです
朝がたに
たんぽぽが咲いているでしょう
わたしは
聞いていたいのです
橋の向こうから
子どもが遊んでいるでしょう
アダムとイブがエデンの園で
最初に読んだのはたぶん
「翼を捨てた天使」
あなたのその声は
白く汚れて
冷たく微笑むのかもしれない
あなたのその声は
わたしを嘲笑っているのでしょう
無花果の実を与えるみたいに
カインとアベルを授かった
本当のわたし
妖精と戯れる処女と呼ばれることもあるかも
嘲笑されようが
揶揄されようが
わたしは
あなたを
ずっと
まちつづけるのです
さがしつづけるのです
戻る 編 削 Point(9)