面接(17)/虹村 凌
職務に関わるから、起こそうとしてくれたんだろう。メールも着ている。どれだけ深い眠りだったのか知らないけれど、疲れていたのは事実だ。随分と、勝手な言い草だけど。
俺はその携帯から会社に電話をかけた。多分、出るのは彼女だ。
「あの、俺」
「いま起きたの?」
「うん」
「さっさと来なよ」
「あぁ、それだけど」
「何?はやくして」
「俺会社辞めるわ」
「えっ」
何か言おうとした彼女が、次の言葉を発する前に、俺は電話を切った。そのままキッチンに進み、水の溜まった食器の中に携帯を沈めた。適当に身支度を整えて、煙草とジッポ、財布だけを持って、火のついたままのセブンスターをソファの上に投げた。白いソファから、薄い煙が立ち上る。俺はそれを確認すると、鍵もかけずに家を出た。
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