あなたは他でもなく/みぞるる
きみの日記だけは
誰に侵されるわけでもなく
ぼくとの季節さえ綴られないまま
風の移り変わりだけが
閉じこめられれば良いと思った
いたずらに慈しめないのは
ぼくが所詮
あらゆる欲望を覚えたうちの
一人にすぎないから
きみは生まれ
偶然、ぼくと出会い
何も知らないまま
口笛を覚えたりした
菖蒲の花が咲くころに
ぼくのことを思い出したりするのだろうか
ぼくはきみを留めることさえできないまま
恐らくはここで
一人の女を愛しながら消えてゆく
ぼくのこんな子供じみた願いを
たったひと時でも叶えてくれるのは
きみしかいないから
それでいい
あなたの瞳に映る仰向けの私は
いつの、誰?
切ない眼光を
愛と勘違いしたまま
私はシーツに熱い息を吹いた
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