闇を口ずさむ/緋乃村燿介
押し寄せる後悔という名の波に攫われて
私は孤独の海に沈んでいく
サヨナラは言わない
サヨナラは言いたくなかった
悪魔に囁かれても
天使に諭されても
神に説かれようとも
サヨナラは言わないと決めていた
サヨナラなんて と 駄々をこねていた
触れてはならない闇を
まさか貴女に触られるとは……
サヨナラという一言を
神にも
天使にも
悪魔にすら動かされなかった台詞が
まさか、貴女に導かれてしまうなんて……
あまりにも酷だ
なんて、無様
黒に染まったコトバのツルギ
喉元に深く刺し込まそうとしてた。
けど、出来なかった……
なのに、貴女は身体を倒したんだ……
なんで……そんな事……
流れてくる涙
混ざり合う貴女の朱(あか)
あまりにも悲しくて
脳内が迂回路を探す
引き返す道を探す
貴女の手を放すだけの行為が
こんなにも
こんなにまでも
僕を狂気と無限放心の世界へと誘っていく……
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