ふさわしい言葉/千月 話子
人でなし
森が忙しく葉を揺らす
カッコウが巣の上で木々を見渡していた
小石のような小鳥の卵を
一つ二つと落としていくのだ
真ん中に一回り大きな卵を産むと
愛しむこともなく
さっとどこかへ飛んで行った
まだ見ぬ君よ
まだ居ぬ君よ
何も知らなくて良いのだ
森を吹き抜ける風が
卵を撫でるように通り過ぎて行った
本能は空を映す湖のように
薄青色の真っさらな塊で
見ず知らずの親鳥の
小さな腹の中で温もりを感じていた
「産まれたい」「生まれておいで」
お前が人であるならば
見合う言葉もあるのだろうが
夏の日は希望に満ちてやっ
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