とかげ/銀猫
 

うすい水の膜を通して
いちにちの過ぎるのを待つ
泳ぐに泳げない、
不器用な蜥蜴の成れの果ては
にんげんに良く似ているらしい


わたしは髪を切る
意地の悪い快感をもって
不運の絡んだ毛先を切り落とす
背中はすうっと軽くなり
背後に捨てた茶褐色が
ひくひくと打ち震えている
風が冷たい首筋も
明日には慣れてしまうだろうが
きっと不幸のくちばしは
そこに留まり
わたしの行方を追えないはずだ
窮地を逃げ去る、
髪を切る

銀のはさみで
再び伸びた尻尾を
さくり、
切ってしまえば
いくらかずつ厄介は離れてゆくのだろ?


切ってやる
切ってやる
わたしはいつでも蜥蜴になって
尻尾を掴まれるその日まで

(今日も青い朝顔が見張っている)




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