panopticon/ケンディ
定多数の誰か--に監視され記憶される。
アルバムを見ているときも、食事しているときも、
独り言をつぶやいているときも、全て監視され、記録されている。
だが彼女はそれを望んだのだった。監視され、記録され
続けていることの自覚。
常に、条件反射的に、己のいましがた行ったこと、発言。
それらは人に聞かれて大丈夫だったかしら。
こう自問するのである。
それゆえに彼女は緊張し続けることができる。
あるとき彼女はコップを倒して水をこぼしてしまった。
その時とっさに彼女は、長々と言い訳を言ったのだった。
「今日は考え事が多かったから、体の周囲への注意が
散漫だったわ。」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)