回転木馬/夏嶋 真子
悲哀の音色と光の乱舞が
互いを完全に打ち消しあって
零れ落ちた沈黙に
回転木馬の夜がくる
めぐり、とまる
とまり、めぐる
繰り返されてきた物語はその結末を許されず
永遠の近似値≒輪舞
の、仮初めの脚を休める
月陰の孤独の一点に吸いついたガラス玉は
目を閉じられずに 張り裂ける瞬間を待っている
卒爾、
小夜啼鳥が しじまに瑠璃を投げいれ
波紋は鼓動と共鳴した
「 馳せよ 」
一夜でいい
それは千夜も同じこと
馬達のいななきに またがり
抑揚の背に火をたぎらせて
夏至の地軸を北へと駆けのぼる
白夜を掴むのだ
回転木馬の小さな軌道は
星の描く円に同化してゆく
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