まろやかな喪失/A道化
部分から、丸やら四角やらにカットされた鏡が垂れている。鏡。それが、風を受ける部分だ。
ふわ、と、風の吹くお昼、それが揺れたら、繊細な金属の高音とその鏡の反射光が散らばって部屋の内膜に優しく刺さって、室内はまるでそっとかき回されている氷水の入ったグラスの中みたいにキラキラ、キラキラ、と冷えるのだ。…冷えたものだった。が。
*
解かなくちゃ、と、その絡まりを指で解こうとしたら、触れただけなのに、する、と簡単に解けて落下して、あっと言う間に、一度屋根で鳴った後、庭の方へ落ちて音が散らばった。
酔うと色々なことが鋭敏なようでいて実は鈍く、鈍く、悲しい出来事も大変まろやかだ。私はただ、あーあ。と、溜息吐きながら見おろした。
ただ、あーあ。と思いながら、しばらくの間、見えぬ風鈴を見おろしていた。
*
戻る 編 削 Point(1)