カサブランカ/智鶴
 
君が唱えた夢のような言葉を
僕は未だに捉えきれないでいる
指先から滴る紅を
君は汚いと笑った

「あなたにはもう微笑まないわ」と
俯きながら君は呟いたけれど
君が一度だって微笑んでくれたことはなかった
一度も


『氷の上で眠るのも、嫌いじゃないの。』
「そう。でも僕は、」
『言わなくていいわ。聞きたくないもの。』
『あなたはただ、私に嘲られたことを噛み締めていてくれればいいの。』
『そう、それだけでいいの。』



僕に似ているこの湿気と
夜に感じる一人の体温
美しい夜に近付いて
僕は焼け爛れた肌を隠せなくなった


『ね?そうすれば、』
「あぁ、君を忘れられるだろうね。」


ただ、僕達の間に
無機質な花が揺れていただけ


(コワイユメヲミタンダ)


君は天使じゃないかと思う
僕に真実の冷たさを教えに来た君は
天使じゃないかと僕は思う

夢にまで見た君との楽園に触れた指先から
知りたくもない真実が
絶望が


見えるよ
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