陽傘/山中 烏流
 
げに話しだした
その仕組みの説明は
私にとってとても難しかった、ということ以外に
言い表す手段がないと言えるほど
難しいものだった


話が一通り終わってから
彼は
「嬢ちゃん、時間は大丈夫なのかい」
と聞いてきた

私は困った顔を浮かべながら
確か
ええ、もう大丈夫です、だとか
そんな言葉を返したような
気がしている


話を聞いてくれたお礼だ、と言って
彼はその傘を
私へ手渡した

開いてみると
何の変哲もない、ごく普通の傘で
少し
その傘を怖く思っていた私は
呆気にとられたような
そんな気分になった


「そんなものだよ、実際には何も出来てやしない」

そう呟いた彼の横顔と
目尻の皺を
綺麗だ、と思ったことは
最後まで伝えずに

私は
頭の隅の方でぼんやりと
太陽を照らすものは何も無いんだな、だとか
そんなことを考えた


傘は、ごみ箱に放る






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