命/唖草吃音
 
浜辺で

ざぶん という波音の方が

波より先に砂を砕いている

気がした


おしてはよせて

消える波

消えても消えても

繰り返し押し寄せる波

プチプチと砂のあいだで

はじける泡の音が

終わりを予感させるそのまえに

ざぶん という音が

はじまりを告げにくる

終わりは 

はじまりという言葉に淘汰され

生命は

ひとつの命をつなぎ合わせてきた


空が紅い

ほんとうに紅い

これは夕焼けなのか それとも

朝焼けなのか

地球はすこし傾きながら

回り続ける


回転は終わらずとも

僕の生命はいつか確実に終わる

そして僕の世界がすべて消滅する寸前に

あたらしい波音が

ざぶん 音をたて 僕の生を受け継いでゆく

  
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