自然/歌川 至誠
 
ギリシャという国の
ある島では
女が 女を
いつくしんでいたという

緑ひしめく小さな島よ
木々が父で
砂浜が母ならば
そんな愛をゆるしてくれるのだろう

いいえ ゆるされない愛など
あるはずがない
本当ならば
あぶない恋だとか
いけない恋だとか
恋を名づけるのは
人間が親になるとき

地球の果ての
無人の孤島に
幼子らを置いてきたとする
春になったら
そのうちのすべてが
男と 女で
結ばれると君は思うか

高層ビルが父で
アスファルトが母なら
ゆるされない愛なんて
あると思うか

島よ
エーゲ海の底に
私たち沈めてきてしまった
愛のかたち
きれいな桜色した貝のから
まちがってなんかいないもの
まちがいなんてないもの

遠い海の彼方から
自然の音がする
極東にある
孤独の島まで
愛の歌を聴かせて

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