タイフーン/船田 仰
九月の台風のつむじに
ぼくがキスをする
彼が好きになる予定のあの子は
申し分の無い足で歩いている
今もきっと歩いて
今朝からずっと続く廊下でぼくは待っている
照明写真の角度を気にしながら
フラッシュなんか嫌いだと言いながら
恋愛中の彼女は目ざとく厳しい目を光らせる
仔犬みたいにサンダルを噛む
それは嘘だけど
僕はだれを好きになるのかなあ
渦のような会話を毎日かわし
いつか誰かのことで泣くのかなあ
空が見える校舎からさかさまで、落っこちる
本当に
ダンスするみたいに唄っていたら
きみが悲しくなった
青空が抜けていく、向こうには何もない
いま台風を待ってるの
風の強い夜を待ってるの
優しさが鼻につんとくるまえに
どうしても、靴脱いじゃわなきゃね
フラッシュが連続して夏という名前の終わり
すべてのブルーが溶けるときに
ぼくは俯いて笑っているだけだ
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