インターネット、遠近法/高橋良幸
無限にもなるだろうが
赤外線を溶かした空のどこかで
忘れてしまわないかね
帰宅しようとして私たちは
点々と席を立つ
窓からのぞく市街地では交通が縦横に操縦され
ビルディングが夕陽をニジュウカケルジュウニのガラス面に分けて(キラキラして)いた
陰影が焼き付けられた水晶体に
一度まぶたをかぶせて
暗がりに向き直る
巨大で(きらきらして)あることと
それを手にするということは
総務のヤマモトさんが残業管理のエクセルをしまう途中の
胸の起伏のようであるかもしれない
凹凸を網膜に残し
指定された場所をブラウザの窓口に記す
今日の退勤に名を刻むために
ディスプレイの先にも
街にも
その上空にも
アドレスがある
ある肉体(例えば指先)も
ある精神(例えば約束)も
指し示すのは常に指し示された場所だが
遠近法は消失点を目指すゆえ
伸びをした両手に
新しい月が隠れる
言葉を知らない頃、外に連れ出されて
発見して
忘れてしまった寓話だ
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