もう、おやすみ/吉岡孝次
 
わかっていながら
最終譚にはまだ遠い
修辞も 出てこない
苦しい言い訳のような
もつれ方
手慣れてはいるが
切実さに
欠けている
眠い季節には 煙い詩を
重い施設には 検非違使を
空白に
ばっ と花弁が開く
ああ いい事ってそんなにないよね
「ビジネス文書」の字が目に飛び込んでくる頁が朝から
ベッドに広げられたままになっていて
他人事でない証拠に
そのおいしそうな記事を夜になって
惜しげもなく 閉じる
何事によらず 引き際が難しい
もう寝る時刻なのに
まだ 詩を作っている
最近 緊張感に欠けているのではないか
  
「まだ」も
「事」も
「欠けている」も
  
なんだか 幼なじみのようだ
「じゃあね」
「またね」


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