みぎて/歌川 至誠
さけびたい夜がある
こころだけ からだの外 飛び出して
駆けていきそうな夜が
悲しみの居場所がわかったら
走り出して どんな痛みも
受けとめてみせるよ ほんとうさ
さけびたい この声が 風になれたら
あなたの涙を拭いにゆくのに
何処にも届かない右手は
左手の指と指 重ねあわせて
祈るためにあるだけなのか
その痛みの薬にも
処方箋にもなれないわたし
だれか 治してあげて
重くなる あの子の右手
動かない あの子の右手
もう一度 笑わせてあげて
大好きなピアノ 弾かせてあげて
たちどまる夜がある
愛と言っても動かせないから
右手のなか悔しさが突き刺さる
脈動だけがはやくなって
月を追いかけてゆく
このにがい夜に
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