面接/虹村 凌
聞いた。声のトーンが、いつもと違う。
「あの…」
「…」
「あの、いま、お付き合いしてる人って、いるんですか?」
出た、まさかの逆転満塁グランドスラムだ。これは、どうした事か。落ち着いて素数を数える余裕も無い。素数が何だったか、広辞苑で調べたい気分ですらある。ウェイトレスが、二人分の珈琲と灰皿を置いて立ち去ったのを見てから、ゆっくり答えた。
「いえ、いませんよ。ここ数年いません。」
最後の一言は余計だったかも知れないが、言ってしまったことはしょうがない。俺は半分も吸っていないセブンスターを灰皿に押し付けると、新しい一本を取り出して火をつけた。
「そうですか…意外です
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