夏と少年/佳代子
私の夏はいつも少年の手の中にあった
降りしきる驟雨の中でさえも
ファインダーは彼らを捕らえ
熱い憧憬でそれを追った
自転車は跳躍するように少年を
パステルブルーの中空へ運び
麦わら帽子の少年のトンボ取りは
やがて虫取り網の乱舞へと変わっていく
世界中から愛されているのだと思った
森羅万象のすべてから愛されているのだと思った
少年という条件に憎悪さえ覚え
ミキシングされた愛憎は涙になって零れた
スカートの裾の小さな握り拳も気づかれないまま
朝顔も向日葵も忘れ去られて
炎帝の供物となった蝉たちが
少年のポケットの中でカサカサと乾いた音をたてている
私の手の中で夏
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