幻影海峡/北村 守通
(序の刻)
ああ
そこにあるのは
あれは虹であって
虹ではないのです
天に昇ることを許されなかった
屍たちの描いた
放物線なのです
無残にも
灼熱地獄に照らされた
残尿の
幾万粒なのです
(壱の刻)
気圧の薄さに耐えかねて
水圧の重さを求めました
重力と
浮力との
心地よい調和の中で
水面に浮かんだ
カァテンの数々を見上げておりました
それは
それはもう
見たこともない
流星群
大気圏に突入しては
地表を目の前にして燃え尽きる
宇宙塵
こんなところにも
空は確かにあったのです
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