掌/松本 卓也
跳ねる小虫がとても目障りで
ティッシュを数枚重ねて包み
一思いに握りつぶした時
口の端は確かに歪んでいた
誰かが主張する正しさとやらの裏側には
賛同と共感を請う自己愛が垣間見えて
どうにもむず痒い気持ちになる
そんな時一寸の虫からさえ
五分の魂を奪う瞬間を思い出す
数多の平凡から抜け出した気になっただけの
そこらへんの小石に等しい存在に過ぎなくて
正義の行く末など精々自愛に過ぎないと
思い知らされればいいのに
纏うような肩書きも無ければ
拠るべき思想も無い傍観者の掌で
潰れた命の感触などは残りもしない
ただ身の程を思い知らせただけだから
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