彦蔵/udegeuneru
 
もわからないではないか
と嘯いていたのが数年前
今はこの体たらくである
大学生活も7年目を迎える
もはや若者とはいえない年齢にさしかかっていた

同級生たちはとうに職を見つけ中には結婚するものも居る
家を買うためにローンを組んだりしている
あるいはFXやら投資などと、もはや彦蔵にはわけのわからないことを言っている
皆それぞれに何かを見つけエネルギーを費やしているのだ

いつもつけっぱなしにしてあるテレビから
イギリスのバレエ団で活躍していたらしい同い年のバレエダンサーが
退団、独立し日本で新進のバレエ団を設立した
というニュースが流れてきた

テレビや新聞で同世代の人間が活躍する姿を目にするのにも慣れた
10代の頃はまだ焦りもあったが
ここまで身を持ち崩した人間が
世間に注目されるとすれば犯罪を犯すぐらいしかない
と一種の諦念をもって受け入れられるようになった
犯罪か、彦蔵はいつもの狭い部屋でひとりつぶやいた。


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