生家/北村 守通
ずいぶん前から
四人に分け与えられていた
空間は
たった一人に占有されていた
十七年近く
四人で分担し合っていた
空間は
たった一人に委ねられるしかなかった
残された空間に
話し相手はいなかった
残された空間に
泣き笑いを共にする者はいなかった
残された空間で
食事は四人分出されていた
残された空間で
眠るとき
隣から
呼吸音による空気の振動が伝わることはなく
隣から
生命活動の存在を意味する
熱源体の存在を感じることはなかった
空間は
いつしか一人のために
丁度よかった
新たに一人が加わるためには
窮屈だった
食事は
四人分から
二人分へと減らされた
それは
とても寂しいものに思われた
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