偽物賛歌/
小川 葉
海辺を散歩して
耳を拾う
かつて貝殻と呼ばれた
それを耳に当てて音を聞く
波の音が消える
大きなその音が消える
代わりに
もっと大きな
大きな音が聞こえてくる
何かが飛び交う音
何かが破裂して
逃げ惑う音
さけび声
声にならない声
やがて声は止むけれど
耳はまた新しい耳へ伝える
貝殻になっても
抜け殻になってもなお
耳は忘れない
神の言葉を
何も誓わずに聞いていた
その果てまでこの歌は
届かないとしても
たとえ偽物だとしても
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