イタリアで食べたたらこスパゲッティのことと、スーツの似合わない50台の男のこと/ピッピ
セックス、ということばを軽々しく口にして
君は飄々と話をつづけるものだから
僕は何も考えずに「え、いまなんていったの」と聞き返すと
君は「え…バンゲリングベイ…?」とその後に言った言葉を言ったから
僕は「う、ん…あ、そっか」と適当な返事をして君の話を聞きつづける
日が変わってからもう六時間弱も経つから太陽が昇っている
薄暗い部屋に少し差し込んだ光は空気中の埃を照らしてきらきら燃えている
日常を壊すものは結局君の口から漏れる振動だけで
それが日常となってしまった今全ては壊れつづけていると言わざるを得ない
欠けているものは玄関の向こう側にあって
そこからも今少しだけ光が手招きをして
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