餓鬼/北村 守通
 
忘れてしまった
味覚が
どうしても
取り戻せなくて
ひたすら
食ってみるのだが

  味はない
  正確には
  なにかしら
  味のようなものはするのだが
  それは
  識別の範囲外であって
  可視光線の
  範囲外の
  波長の光と
  同じで
  存在を感じ取ることはあっても
  存在を認識することはできない

忘れてしまった
質感を
どうしても
取り戻せなくて
ひたすら
食ってみるのだが

  満腹中枢が満たされても
  満たされることはない
  もう
  食えないというのに
  食えなかった
  焦燥感が
  容器を破
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