どんふぉげっとの妖怪/キッチン
左肩重たい思いのしかかるオシノさんから離れた後で
鏡越し見えた姿はベレー帽「わすれてはいけない」声がした
路上にて愛を売るのが仕事だとオシノさんの書く字は小綺麗
神棚に住み着く祖母の助言聞くなるたけ大きな声で泣くこと
オシノさん、こちらの声など届かない「どんふぉげっと」の声がするのに
どんふぉげっとの妖怪を連れて行く一日に生きて一世となせる
黒猫は母の姿よ祖母が言う神棚にはもう手が届かない
黒猫のしっぽ追いかけ逃げ込んだ闇で紐解く母親の情
忘れてはいけないそれが口癖のオシノさんとはもう思い出せない
泣き虫を殺虫剤では殺せない気付いてしまった燻煙の中
あやか市の動物園だね言われても私はその唄知りませんでした
今でもね「どんふぉげっと」と呟いて思い出してるあなたの文字を
黒猫がベレー帽にかみついた金曜越してから肩が軽いな
結局ねはっぴいえんどのお話よ聞く愛娘の目にはあやかし
私には見えぬ妖怪捕まえて「オシノ」と名字を書く愛娘
「忘れてはいけない」二人こっそりと唱えて笑う黒猫も鳴く
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