先輩フェチ/佐野権太
演劇部の先輩のふくらはぎに
さくり、と突きたつ
矢文になりたい
長閑な朝の通学路に
あらっ?と気づかれて
さらさらほどかれたい
演目は
「草原とピアノと少女と」
そんなガラス球
僕は
ダンボールで作った草とかを
かたづける役でいいです
*
退屈な午後の授業は
エスケープして
自由な水色に走り出す
先輩にみつかって
きみねぇ、とあきれる
小さな溜め息に叱られたい
飲みかけのサイダー瓶から
しゅわりと広がる香り
そんな微炭酸
僕は
先輩の胸の
ポケットの中とかが
いいです
*
先輩の瞳にひろがる
琥珀の海の、さざ波
舞台袖の床の油脂と
体操マットのひんやりした汗の匂いに
天地を曖昧にされながら
しっ、誰かくるわ!
とか言われたい
*
先輩、
僕はHENTAIでしょうか
それとも
美しいものに恋する心を
フェティシズムと呼ぶのでしょうか
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