ウミナリ/靜ト
 
明日は海が見えるといいな
この窓は晴れた日に水平線が見える
きらめいて きらめくたびに
海鳴りよりも遠くて深い いつかの音がする
胸の奥にいつのまにか 残してしまった


*真剣な話をした
 例えば生きることの
 例えば死ぬことの
 例えば愛することの
 大事な友人に
 泣きそうな熱さで
 けれども友人は
 笑ってこう言った
 「もっと楽しい話しよ」
 私も笑った
 楽しい話をした


風船を飛ばす癖のある子供だった
家に帰るまではしめった手で痛いほど紐を握りしめているのに
どうしてか 家に着くと飛ばしてしまうのだった
明るい赤色が遠ざかってゆくのを見
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