「蟻」/ベンジャミン
 
は蟻という殻をまとった
つまり蟻という命なのだと

飴の中に閉じ込められた蟻は
飴の中でただ幸せな殻となり
それはどんな悲しみも受け入れずに
わたしはそんな蟻を幸せそうにただ
眺めてやることしかできないのだ

蟻の味わった苦しみはすでに
飴の甘さにとけてしまっているから

だから
わたしはその幸せな殻にむかって
涙を流してやることもなく立ち去ろうとした
そのとき

幸せな殻となったはずの
飴の中に閉じ込められた蟻が
少しだけ動いたような
気がした

それは
幸せな殻にしまわれるはずの

わたしの悲しみだったのかもしれない

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