「蟻」/ベンジャミン
 
とけた飴の中に
蟻が一匹閉じ込められていた

綺麗にそろった六本の脚は
もう動くことはない

蟻は甘い甘い飴の中
最後を迎えるにはこれ以上ない場所で
きっと苦しみ抜いたに違いない

けれどその苦しみさえも
飴は甘く包み込んでいた

傾いてゆく日を反射して
キラキラと光るその身体は
どんな悲しみも寄せつけない

(それは殻だからだ)

それは蟻という殻であって
もはや蟻そのものではなく
それは飴という墓場の中で
ただ美しく横たわっている

(涙の中で溺れる蟻を想像してみた)

どんなに残酷であろうかと
それは蟻
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