豊年海老の頃/taznu
 
わたし
(これは人間になってから知ったのだけれど)
以前は棚田のホウネンエビでした。
ある暑い夏の日に
BOSEのヘッドフォンで音楽を聴きながら歩いていたのです。
ちょうどドビュッシーの夏の風の神がかかり始めた時
図書館が見えて
緑が多くてなんとも涼しげで
(ほら、ヘッドフォンが暑くて暑くてもう耳はびしょびしょだったものだから)
ぴんぽろん というピアノの音色に身をまかせて入っていたのです。
借りたい本があったわけではないから
とりあえず書架の間を縫って歩いて行きました。
明るい方へ吸い寄せられて行くと、
そこは児童書のコーナーで
子供の丈に合わせられた本箱の上に木漏れ
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